「逃げ出しだ愛人」の感想

ジュリア・ジェイムズさんの「逃げ出した愛人」のネタバレあり感想です。

 

あらすじ

姉夫婦が亡くなり遺児であるアリを引き取っていたアンだが、姉の夫の兄であるニコスが現れ甥を手放すよう要求し、百万ドルを提示してくる。条件はアリに二度と会わないこと。アンはそれを受けるが、4年後偶然にも甥と再会をする。その隣に魅力的で自分を軽蔑しきったニコスもいた。

 

この2人、相手の第一印象どちらも最悪なのに

お互い見た目がドストライクすぎてずっとグラグラしています。

それが面白い。

分かりやすくてロマンス小説の入門編としてオススメしたいかも。

 

アンはお金を受け取ったこちらの事情をまったく顧みずに

見下し続けるニコスとずっと距離をおこうとします。

姉のことを身持ちの悪い女扱いして自分の弟との結婚を許さなかったせいで

今回の交通事故が起こったとも思っているので許せません。

しかし初めて見た時から彼の外見に惹かれ続けています。

 

ニコスはお金のために大事な甥を売ったアンを姉と同類と思い軽蔑し

4年後再び甥の前に現れたアンに金の無心にきたと激怒します。

ニコスは初めて会った時のアンに対して外見を含めマイナスの感情しかありません。

でも二度目に出会った時に身ぎれいにしたアンの外見に一目ぼれします。

 

こういう時ってヒーローは

貧乏でボロボロな外見なのになぜか光るものがあると見抜いたりするものですが

そういうことが一切ないのが逆に潔い。

 

姉の遺児であるアリの叔母であるアンは

アリ達家族としばらく一緒にバカンスをすることになりますが、

ニコスは究極に気に食わない。

でも心臓の悪い母親を気づかって表面上は波風を立てません。

でもこっそりアンに皮肉を言うことはやめない。

 

アンは百万ドルの使い道をニコスにまったく明かさいのが良かった。

豪遊に使ったと思われているけれど、わざわざ訂正することもないと思っています。

なぜならニコスに好かれようと思っていないから。

好意的に思っている相手が自分のことを誤解していたなら

包み隠さずとはできなくても訂正しようとすると思います。

でもニコスにそれをするためのコミュニケーションすらとりたくない。

おそらく言ったところで信じないというのもあったと思いますが

それをずっと貫き通します。

でも魅力にはすぐやられちゃう。

 

ニコスは最低な女と思っているのに惹かれてしまっていることにイライラし

最終的に体の関係だけの愛人にして適当なとこで縁を切ればいいと思いつきます。

名案!みたいな感じですが

甥っ子や母親のいる前で愛人を囲おうとしないでほしい。

アンのこと何も言えないくらい最低って分かってないのすごい。

 

ニコスは距離を詰める言い訳ができたのでグイグイいきます。

アンは正直関わりたくないけど姿を見るだけでときめいてしまうので

あっという間に篭絡されてしまい大変後悔します。

 

そのままなし崩し的に愛人になるかと思ったら

毅然とした態度で関係を絶とうと努力します。

ここで流されないアンかっこいいです。流されかけるけど。

 

最終的にちゃんと会話をすることで誤解がすべて解け

結婚してハッピーエンドなわけですが

交際ゼロ日婚と言っていいほどそれぞれのことを知らないのにいいのか?

お互い姿を見た瞬間に恋愛感情が爆発してしまうから関係ないのかな。

 

ただアンの百万ドルのお金の用途がアフリカの孤児達のためという

突然スケールの大きい話になったのは面くらいました。

アンと姉は孤児になってしまい大変な苦労をしたという話があったので

きっとそっちの方に使ってるとは思っていましたが

まさか自国を飛び出してしまうとは。

 

現地でアフリカの子供達に愛情を注ごうとしたアンが

結婚してお金持ちの旦那と可愛い甥に囲まれて暮らすことを選ぶギャップが大きく

目立つための舞台としてアフリカの子供達が消費された気がしてしまいます。

それだったらアフリカではなくもっと近場からだったら

結婚してもなんらかの活動を続けるのだなと想像しやすかったのですが

これだと最初の志しを諦めてしまった印象になりました。

 

アフリカという遠い地へ行こうとするアンを

今引き止めなければ永遠に自分から離れてしまう。

その焦燥にかられ本心を晒すニコスというのをやりたかったのだろうけど

最後の最後で釈然としませんでした。

 

それでも、憎しみを持つほど嫌いなのに

外見が好みすぎて嫌いになれない2人という

難儀ですがまさに恋愛物といった感じは面白かったです。

2人とも既婚じゃなくて命拾いしたな。

 

★★★★