「従僕と伯爵と私」の感想

ヴァレリー・ボウマンさんの従僕と伯爵と私のネタバレあり感想です。

 

従僕に扮した貴族であるヒーロー3人が

それぞれのドラマを繰り広げながら運命の出会いを果たすシリーズ物らしいです。

すでに既婚者であるクレイトンにも

今の奥さんとのドラマチックな出会いがあったようです。

ただ従僕になっていないだけで別で本が出ていそう。

 

今作のヒーローであるケンダル伯爵は

婚約者に一方的に婚約破棄されたトラウマから

家柄と財産だけではなく本当の愛情を向けてくれる相手と出会いたいと

お酒の席で管を巻きます。

使用人に優しい人こそ愛情溢れる素晴らしい人に違いない。

なら使用人になって見極めようぜ。

面白そうだから俺らもやろうぜ。

ついでに賭けもしちゃおうぜ。

 

頭が痛くなりそうですが実行されます。

ちゃんと研修期間を経て従僕に扮するんですが

貴族のお家の使用人って一流ホテルマン並みの動きという認識なんですが

一長一短で習得できるものなんですかね?

みなさん元から優秀っぽいからできるのか。

 

そしてヒロインであるフランシスと出会います。

フランシスが従僕である自分に優しく接してくれたことにより

あっという間に恋心に火がつくんですが

まって、フランシスはあなたの顔がいいからそういう態度な気がする。

 

確かにフランシスは元から優しいですし、

自分の家のメイドにもきつく当たったりしません。

そのメイドはなかなかイイ性格してましたが。

でもケンダル伯爵扮するマーカスを追いかけて

従業員のエリアまで入ってわざわざ謝罪したり

楽しくお喋りをしたりするのは

確実に気があるから。

他の従僕全員に同じ態度はしないはず。

してたら逆に気が多い人みたいになってしまう。

 

そして中盤は意外にも新しい法案のことがメインになっていきます。

ケンダル伯爵が推している法案はフランシスには受け入れがたく

女だてらに声高に反対意見をのべ続けています。

そのせいで嫁ぎ遅れてしまっていますが本人は気にしません。

でも伯爵的にはようやく見つけた愛する人

自分がどうしても成し遂げたい法案の一番の反対者だということに打ちのめされます。

ただでさえ身分を詐称して親しくなってしまった負い目があるのに

政治的にも対立してるなんて見通しは暗いです。

 

何回も打ち明けようとしたり、もう会わないと誓ったりするけれど

どうにもうまくいかず、

ついに正装した伯爵の姿でフランシスの前に現れた時には

周りの人達に邪魔されて打ち明ける前に周囲の声でばらされてしまいます。

一番最悪な展開ですね。

そしてショックを受けるフランシスに

「違うんだ、自分の話を聞いてほしい」

と言い募る伯爵。

このワードを言うとだいたい聞いてもらえないので

このセリフを省略して本題を叫んだほうがマシなんじゃないかと常々思う。

 

もちろんうまくいかず逃げられて

何回目かのもう従僕やめて家に帰るを発動させる伯爵。

それをするならもうちょっとアタックしてほしい。がんばれ

 

「罪悪感よりも最悪な感情は後悔」

友人からそう後押しされて伯爵は動きます。

とても良い言葉だと思います。心に留めておきたい。

 

そしてなんやかんやありまして

伯爵の推し進めていた法案は主人公のダメ出しのおかげで

あまりというか全然良くないものだと自覚され撤回されることになります。

それは伯爵からすると貴族は平民を保護するもので

それをやり易くするための制度とする予定だったんですが

貴族はいくらでも平民から搾取しても良いという結果になりかねないものだったようです。

性善説が前提のものだったので、通ってしまっていたら本当大変でした。

主人公は良い仕事をしたね。

色々な貴族を説得してまわったと書いてあったので

もろ手を挙げて賛成されているイメージはありませんでした。

案外まともな貴族が多いのかもしれません。

 

友人が主人公への仲裁に入り、また帰ろうとしていた伯爵と和解し

お互いの気持ちを確かめ合い体の関係を結びます。が、そこが長い!

正直あまり重要と思っていないので仄めかす程度にしてほしいけれど

そういうものだから仕方ない。

でも全体の6%くらいって長すぎませんか。

そして終了。

主人公と結婚する気満々だったサー・レジナルドはどうなったのか。

あの激しい母親がどういう風に手のひらを返したのか。

浪費家の父親の行く末や妹からの祝福などもほしかったし

友人達からの今回の感想もほしかった。

 

あと2冊は出ているから他視点から語られるのかもしれないけど

訳されていないようなので真相は分からなそうです。

 

馬丁に扮した公爵が自分から婚約破棄したご令嬢に正体を見破られ

なんだかんだ良い感じの雰囲気になっているようでした。

 

従僕に扮した侯爵は、自分が従者をしている貴族が連れてきた小間使いと相性が悪いようですぐ口論になってしまうようです。

察するにその小間使いはその貴族の娘で、どういうわけか同じく変装をしているんじゃないかと思えます。

この話がとても気になるんですが読めそうにないのが残念。

 

一冊でも楽しめる三部作とのことですが

どうせするなら全部訳してもらわないと消化不良になります。

 

貴族が従僕に変装するという漫画のような出だしから

突然メインに政治の話が出てくるのは面くらいましたし

その内容もなかなか出ててこないのでどれだけ素晴らしいのかと思ったら

あっさり撤回されるようなものだったのでなんだったんだと。

それにすぐに言い訳して逃げ続けるヒーローや

嘘をつかれていたのがショックだったから、

話も聞かずに一番結婚したくない相手と結婚すると言い張る主人公にちょっと疲れました。

 

★★