「灰色の伯爵」の感想

パトリシア・F・ローエルさんの「灰色の伯爵」のネタバレありの感想です。

 

あらすじは

幼い頃に両親を亡くした主人公キャサリン

後見人である叔父の借金のカタに

冷徹と言われるコールドベック伯爵と結婚することになる。

そして伯爵と共に訪れた新しい居住先の領地では

残忍な連続殺人と放火事件が起こるのだった。

 

恋愛だけかと思ったら意外にもサスペンスが始まります。

最初はお得だと思いワクワクして読んでいたんですが、

事件の残酷さが思っていたよりもひどく、

読んでいてテンションが下がってきました。

もう誰も犠牲者が出てきてほしくないという気持ちを

登場人物達と共有できる臨場感はありましたがそこまで望んでいない。

 

とりあえず登場人物の感想。

まず主人公のキャサリン

すぐに怒るところが魅力のようです。

ヒーローであるコールドベック伯爵はそんなキャサリンに夢中です。

でも実際怒ってばかりの人ってそんなに魅力があるものなんでしょうか?

結構自分の感情や機嫌に左右されているので

そんな理由でヒーローに当たって大丈夫かとハラハラしたりしました。

 

そしてヒーローのチャールズことコールドベック伯爵。

初登場時、部屋に立てこもるキャサリンと対話するために

ドアを容赦なく蹴り開けます。

しかし怒ってはいなかったそうです。でも怖いよ。

センセーショナルな登場をしたかったのかな。

この伯爵、実はキャサリンに一目ぼれ。

どこかで彼女を見かけ、結婚するためにあの手この手を尽くしたようです。

それでも怒っているキャサリンに対して下手に出ることもなく常に悠然と構えています。

そしてキャサリンが怒る。

 

2人の関係性は突然の環境の変化と

物のように売られたと感じたキャサリンが激怒するなか

大人なチャールズが余裕をもって相手をしつつ実はメロメロという感じかな。

 

年の差が元からあると思いますが、大人の包容力を感じるヒーローは珍しい。

だから生命そのもののように喜怒哀楽がしっかりしたキャサリンを受け止めれて

相性がとても良く感じます。

 

ただ殺人事件がほんとに陰惨で・・

被害者は身体的に不自由なところがある女性達で

拘束されたうえに乱暴され、その後殺した後に建物に火をつける。

なんでこの人達がこんな目に合わなければいけないのかと怒りがこみ上げました。

最後の被害者なんて生きながら耳を切られたようで一番ひどい。

だから犯人を捕まえて2人の愛を確かめ合いハッピーエンド!となっても

素直によかったねという気持ちに切り替えれませんでした。

 

犯人はチャールズの友達のアダムだと思って読んでいたら全然違いました。

チャールズの妹と恋人関係にあるのに

なかなか結婚の了承をしてもらえないのは

なにかしら問題があるからでは?と思ったんですが。

火傷の痕をつけて登場とか、

事件現場の近くに登場とかも怪しさ満点だったんですが

スリードに引っかかったようです。

妹の義理の息子は怪しすぎて逆に怪しむ余地はなかったですね。

 

結局犯人はチャールズの隣人で、

過去のトラウマが性癖に刺さってしまっての犯行だったようです。

キャサリンが領地へ現れおそらく一目ぼれし、

スイッチが入ってしまったのが事件の始まる切っ掛けだったようです。

犯人の過去をクドクドと解説せずに

ぼんやりとした断片のみの表現だったのは良かったです。

でも、そもそも事件を起こすにしても

被害者にここまでひどいことをしなくてもいいのではないかと思ってしまいます。

なにしろこっちはロマンス小説を読むつもりだったので

盛り上げるための舞台装置としてこの犯行を用意したならちょっとドン引きです。

1人目までは許容できたけど

2人目は被害者の旦那さんが落ち込む描写とか大変つらい。

それを言ったら1人目は幼い子供が2人いました。

キャサリンが運営する孤児院に入れるための流れだったら

それもやっぱりどうなのと思ってしまいます。

 

キャサリンの癇癪を受け止めれるチャールズというのがとても良かったのですが、

事件のせいで真顔になってしまうストーリーでした。

 

★★★